president command


「………そぅ」



絞ったような声だった



「すみません」

「いえ。お見合い時に隠されていたわけではないのは知っています」

「はい」



そう、あの時はまだ

ひよとは付き合っていなかった




「………しかし、お食事にお誘いした時なぜおっしゃってくれなかったのですか?」





あの時俺がひよと付き合っていたこと知ってるのか


どこからの情報だ?




「あなたとは友達になったとばかり思っていましたが」


「たしかにそうです。私は新さんと友達になりたいといいましたが……」



次に出てくる言葉を

言わせようとしている俺は最低だ

「すみません、希さん。俺はあなたとは友達にしかなれません。」



さすがに続きの言葉を言わせてしまう前に自分からきりだした



「………」



「すみません」




「……わかりました。今はまだお友達ということですね。」


「いや、俺はこの先も「では私とのお食事は友達同士のお付き合いということですね」…………」


「ちょうど来週かしら?」




……………もう来週か、




「あなたに恋人がおられても将来を約束されているわけではないのでしょ?」

「……」




彼女に全て飲み込まれていた



何も言えないまま



次の言葉をまつ



「私はあなたのことあきらめませんので」





「…………」




ほら、



もうここは彼女の場所だ


踏みいったら抜け出せなくなる





ひよとは違う意味で




抜け出せない空間






「突然伺ってすみません。ではもう失礼しますね」


「…あぁ」

きびすをかえし
ドアをあける希さん








ふふ、と小さな笑いがもれていたことを





俺は知らない




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