天神楽の鳴き声
莉津の淡い翡翠のような瞳が美しい。雛生は何も言わずに莉津を見つめ返した。

「お二人の立場が、時間がそれをゆっくり育むことを許さないとは存じております。ですが、どうか、逃げずに向き合ってくださいませ。それが相手への誠意だと、わたしは思います。」

誠意、か。
ありがとう、と告げ、莉津に下がってもらう。時計を見ると深夜と言える時間になっていた。長くいてもらって悪かったな、と雛生は思いながら、莉津の淹れた御茶を呑む。
ふう、と息を吐くと、また、扉の開く音る。
そちらを見ると、志臣が躊躇いがちに入ってくる。

「まだ寝てなかったの?」
「さっき起きちゃったの。」

寝台に腰掛けていた雛生の横に遠慮がちに志臣が座った。

「おつかれさま」
「うん、雛ちゃんもね。明日がついにお祭りだけど、大丈夫?」
「…ん、…まあまあ、ね…」

あの時から、雛生は志臣に緊張を覚えるようになった。
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