天神楽の鳴き声
「すみませんでした」

春礼が謝るより前に透茉は頭を下げた。

「…なんで、透茉が謝るの??」

私が悪いのに。

「春礼さまの御身を護ることが俺の存在意義です。護れない俺は生きる意味なんてない」

その苦しそうな顔は、いつもよりも彼の人間味を感じることが出来て春礼をほっとさせた。

「私の事を嫌ってるんだと思ってたわ」
「最初こそ戸惑い、苛立っていましたが、透の血は厄介なものです。本能が貴方を大切だという。…永い時をどうかお側に置いてください」
「まるで婚姻の時にたてる誓いの言葉みたいね」
「…な…こ、婚姻…?」

何の気なしに発した春礼の言葉に透茉はいつもの調子を崩し、顔を赤くしていく。

「驚いた…透茉って、そんな顔するのね…」
「俺を一体なんだと思ってるんですか…!?」
「心のない冷たくて、怖い人なんだって思ってたの」
「そんなわけないでしょう?!…いつも心配ばかりさせて!こちらの身にもなってください!!」

いつにも増して大きな声をだして春礼を見る透茉は赤い顔がまだ直っていない。
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