天神楽の鳴き声
雛生は自分に割り当てられた室に入り、寝台の上に腰かける。
お偉い先生のために朝早く結われた髪をといた。

「天神楽は繁栄を、けれどその代わり生け贄?
おかしいと思わない?
私たちや私たちの大切な人が死に逝く恐怖に身を委ねる?

本っ当ありえない!!」


雛生が感情を露にすると、明乎は宥めるように雛生に近づく。
雛生の憤慨はまだ幼く、ふたりにとって通り過ぎてしまった感情だった。納得してはいない、けれど、やりすごすということを学ぶのだ。
雛生だってもう子供ではない、いつの間にか、十八になっていた。

「あっち守りゃあ、こっちは守れない、選んでるんだもの、仕方ないでしょおよー」
「明乎の言う通りですよ」


2人は雛生よりも年上のため接し方は時折、姉のようになる。
機嫌なおしてくださいなー、と明乎はぎゅうっ、と抱きつく。


む、むね…。

「圧迫がハンパないんですけどっ!?」
「サービスよぉー。そんじゃそこらの男には触らせないのよ?」

ご利益ありそうでしょ?といいながら明乎がにひっと笑う。媚びたところのない明乎の笑い方が雛生はすきだった。

「いやー、なんていうか、美しい花たちが戯れているのを見るのは、なかなか壮観ですねー、帝?」
いかにも軽薄そうな声がふってくる。
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