天神楽の鳴き声
「お兄ちゃん、酷い。一応村一番の器量良しって言われてるんだからねーっっ!!」
「べらべら喋らなきゃ一番だろうよー」


騒がしいが、あまりの微笑ましさに雛生は笑ってしまう。
「お兄ちゃんはお茶菓子置いて出てって!!…雛生さんを着替えさせるからね!!」
「はいはいー」

ひらひら手を振って彰榮は室の外へ出ていった。
雛生を彰綺は見てにまりと笑った。

「さ、私の着物だけど、無いよかましよね?…丸々一晩、息してるのかも不安になるくらい眠ってたんだからー。あの病だったらって思うともっと不安でー」
「あの病?」

雛生は彰綺が差し出してくれた着物を羽織り、帯をする。彰綺はてきぱきお茶の用意をしながら話すのを止めない。

「知らない?最近流行ってる奇病よ。漆蕾病(シツライビョウ)って名前なんだけれど…。黒い蕾のような痣が胸に現れて、あれよあれよという間に死んだように眠ってしまうの」

「シツライ…」
「沚維(シイ)さま…あ、この村を仕切ってる方なんだけどね、なんでも、この国が傾いている際に流行る奇病なんですって……この国にはまだ新しい皇子が居られないし、だからじゃないかって…」


彰綺は最後のところだけ声を小さくする。
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