天神楽の鳴き声
「そう」
「私達を見捨てた?」
「何も知らなかった。…ううん、言い訳にもならないね、ごめんね」

呆然としたまま彰綺は動かない。低い地位の者が高い地位の者に助けを乞うのは当たり前だ。それを無意識にも雛生は放棄していた。
許してなど言えるはずがない。

守られるだけが嫌ならば、自分の意志を通したいなら、前を向け。目を反らすな。

雛生は拳を握った。

「いくね、私、本当に申し訳ない事をしていたわ。…明乎!」
「はーい、もう行くんですか?」
「うん、」

雛生と明乎は村の外に出た。馬に明乎と一緒に乗る。もう、東の空が明るくなっていた。

「いいんですか?雛ちゃん」
「うん…」

これで良い筈だ。大丈夫、呪文のように雛生は心の中で唱えた。

「雛ー!!」

振り向かなくてもわかる。彰綺だ。

「あたし、あなたを!雛を信じるわ!あたしと一緒に過ごした雛を!だから、だから…!許されないだなんて、思わないで!…あなたが」

体が揺れる。きゅ、と拳を握った。震える。
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