その瞳で舐めあげて
さっき連れ込まれたときと

同じ格好の郁箕が嫌っそうに

座っている。



「こんにちは、倉田さん」



吐気がするくらいの営業スマイル。



「こんにちは…」

「丹音さん、初仕事ね!」

「自信はないですが頑張ります」



「失敗するならクビにしますけど」

私にストレートに言葉をぶつける。

もうクビにしてほしい。



でもやると言った(言わされた)からには

無責任なことはできない。

私は郁箕の目的を知る必要がある。




「ご期待に添えられるように

努力します」

「…もう、郁箕は厳しいんだから。

落ち着いて、頑張ってね?」

「はい」

「スタジオに案内するわね」

立鍋さんについて歩き始めると

声が触れる。




「クビにされたからって俺から

逃げられるなんてのは大間違いだよ」

そう言うと私を横切って歩いていく。

どこまでも苛つかせる奴だな…


< 26 / 82 >

この作品をシェア

pagetop