ALONES


だが、国を通る時には勿論、宿に泊まるにも、料理を食べるにも“パスポート”と言う物がいるとは知らなかった。


「オルフィリアがどうだかわかんねぇが、ロレンツェでは殆どの場所でパスポートの提示を要求される。
別に何もしてなきゃいいんだが、牢獄上がりの罪人には赤色のパスポートが発行されるから、治安維持の為にそれで見分けてるって話だよ。」


っても、この街じゃそこら辺はうだうだになってるし、“教会のシスター”がそれをよく思っていねぇから、パスポートはどっちでもいいんだけどよ。とティベリオは付け足したが。


今後ここからどこかに行く為には、必須と言う事だろう。

また、パスポートと言うくらいだから、手続きも厳しいのかと思ったが、意外とあっさりしているらしい。


「ここに地方局なんつーお偉いさんの駐在所なんてねぇからさ、パスポートの発行は教会でやって貰えるぜ。出身地とフルネーム、あと性別さえ書き込めば発行完了。」


簡単だろ?と彼は笑う。


まぁ、確かに簡単だ。

でも、少々困ったことがある。



…フルネーム、か。



流石にアルヴァスティン・フォン・オルフィリアと書く訳にもいかないし、ましてやその人物はもう死んでいる。

更に、人魚であるキーラに名字などあるのかさえ疑問だ。


いっそ、適当につけてしまうか。


悩んでも仕方がないし、正直名前なんてどうでもいい。

それに違っても追及される身分証明がないのだからきっと大丈夫だ。

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