ALONES

アルの家から少し歩いた所に見える小さな森。

昨日、私が花を摘んでいた所。


ちょっぴり苦い思い出はあるけれど、花は朝露に濡れ、とても綺麗に咲き誇っている。


家の中を花だらけにしちゃおうかしら。

でも、アルの髪の毛に沢山花飾りをつける方が面白いかも。


「このお花、いい匂い。」


そうやってひとり花の匂いを嗅いで楽しんでいると、急に木々が無くなって…

はっと顔を上げれば、途端に海が広がった。


「――――。」


ザァッと髪を揺らす、潮風。

眼下に見える砂浜に、絶えず波が押し寄せては…引いてゆく。


海の音。海の匂い。

遠い昔の懐かしさがふいに甦って、少しだけ寂しさを思い起こした。


――兄さん、姉さん、リリ、ローイ…ナーチェ…。


大好きな皆。

今でも会いたい、物凄く会いたい。


でも…それは叶わない。


哀しみが押し寄せて、引いて…


今と言う幸せが引いて…押し寄せて。

< 47 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop