『無明の果て』
「絢
あぶないから走らないで!」



絢はもうすぐ三才になる。



広い空港の人混みの中を走り回って、母は追い掛けるのに必死である。




一行がアメリカへ行ってから二年。



涼は三年目の挑戦を続けている。




夫は28歳になった。


そして、私の夢が叶う時が来た。



やっと三人で暮らせる時が来た。





大きなガラスの向こうから小さく点滅した機体が見えて来た。



「絢
あの飛行機にパパが乗ってるのよ。

絢、寝ちゃ駄目だよ。」




出迎えの人に押されて、絢と二人、一番後ろで一行を待っている。


みんな、みんな、大切な人を待ちわびている。


もしかしたら、予想もつかないドラマチックな人生を過ごして、悲しい心を抱えて、何もなかったような顔をして微笑んで…


でも、それでいいんだよね。



その先の運命は誰も知らない事だから。


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