Black Beast.



拓未くんが何かしたのかもしれない。



マキさんに限らず、色んな人に
色んな扱いをされてきたけど
謝ってきたのは彼女が初めてだ。



・・・・それに、あの目。



私は何も言ってないし、していない。
彼女が泣く要素は私が教室を
出た時点では何もなかった。
きっと、拓未くんだ。



1限目の生物は移動教室で、
拓未くんか大勇くんに
会ったときにすぐ返せるように
鞄を持って廊下を出た。



よく考えたら、名前を聞いただけで
クラスを聞いていなくて、
そもそも後輩なのか同級生なのか、
先輩なのかすら分からなかった。



「 ・・・・はぁ 」



空気とあまり変わらなかった私の存在が、
昨日の今日で全く別のものに変わったらしく、教室でも廊下でも、人の視線がやたらと
私に向けられている気がした。



大抵のことは受け流していた私でも、
さすがに大勢の視線には耐えられず
視線を足元に落とし、なるべく
周りを見ないようにして足早に
生物室へと向かった。



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