Black Beast.



「 みんなで楽しい旅行にしよう?
  だから、辛いこと思い出して
 泣きたくなったら玲央の胸に
  飛び込んでいいよ。
  玲央以外の男の胸で泣いたら
  玲央が何するか分かんないからね 」



冗談混じりに笑いながら、
私の髪を優しく撫でてくれる
璃玖くんの手は、温かくて。



「 イライラしたら大勇を殴ればいいし、
  すずに噛み付いてもいいよ 」


「 俺は受け止めるよ、柚菜ちゃん! 」


「 噛み付くのはちょっと・・・ 」



涙を誘う優しい言葉ばかりの話が
段々違う方向へ逸れていって、
最後には漫才になっていた。



「 そこは受け入れろよ! 」


「 だって痛いじゃん! 」



泣きながら笑っていた私は
浴衣の袖で濡れた頬を拭って、
作り笑いなんかじゃなく、
今度は自然な笑顔で、顔を上げた。








「 ・・・・ありがとう。
    みんなだいすき・・・ッ 」




仲間だから、弱いところを見せても
いいんだね。
”俺もだよ”ってみんなから
返ってきた言葉に苦笑しながら、
私は、玲央くんのことを考えていた。




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