俺は使用人、君は姫。
☆第二章

想い

あぁ、またここに戻ってこられるとは…。

俺は今、懐かしい姫の部屋扉の前に立っている。

もうこの際、昔のように『姫』と呼ぶことに決めた。

俺的に、それの方がしっくりくる。


昔のように扉を叩く。

叩く回数で俺って事が分かるはず。

昔、二人で決めたことだった。

何故。

失礼します。と、言えば良いものを。

ということになるのだが。

俺は、慣れ親しんだ者に敬語は使わない主義だ。

それと、二人の秘密的なところが気に入っているから。


「紅羽?」


愛しい声と共に扉が開く。


「入って。」


姫の部屋は、昔と随分変わった。

何というか、姫同様落ち着いた感じになった。


「紅羽っ。」


途端に、背中へ暖かな温もりを感じた。

姫が俺に抱きついてきた。

抱きついて…って、


「姫っ!?」


首をひねって振り向くと、自分の背中に顔をうずくめる姫の姿があった。


あぁ、昔はよくこんなことがあったような…じゃない!!

俺は今、もう少ししたら成人って歳で、姫はまだあどけない13歳。

昔は許されただろうが、今は。

姫も少しは勉強をしているわけだし、俺(使用人)とこういうのは駄目だと分かっている、はず…。


俺も、好きなわけだから、嬉しくないなんてことはないが…。

…駄目なんだ。
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