耳飾りの女
『今夜は行けない』

仕事が忙しくて。
部下がミスをして。
徹夜になりそうなんだ。

舞、ごめん。



言葉の羅列が捲し立てられる。

私は無言で受話器を切った。

お気に入りのカウンターの定位置で、美味しいお酒を飲んで。
心地よく、楽しかった気持ち。

それが一気に冷めた。

「帰るわ」

私が告げると、バーテンダーは気の毒そうに頷いた。

カウンターにお金を置いて立ち上がる。
からん、と音を立てて開いた扉から外に出た。

風が冷たい。
吐く息が白かった。

冬だもん。当たり前か。



私はタクシーを拾える大通りに足を向ける。
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