ピエロ-私と中年男の記録-
比較
「あ…!!」

妹が慌てて口をふさいだ。

「久しぶりやな。」

良いニオイのおじさんは、母にそう言った。

「ほんまやなぁ。今日は子供も、久しぶりに連れて来たんよ。二人とも、挨拶しな。」

母が私をつついた。

「こ、こんばんは。」

一応、笑って見せたが、どう見えたかは分からない。

「こんばんは。おっちゃんは、色々仕事するおっちゃんです。彼女募集中です。」

怖そうな顔が、ゆっくり笑った。

母もママも笑っている。


初めて会ったときと、全然違う。優しそう。顔、キレイ。小指のおっちゃんと違って、鼻毛も出てないみたいやし、鼻高いし。



私は黙って、二人の中年を比べていた。




「この店はおっちゃんが多いなぁ。ほな、このおっちゃんは、新聞のおっちゃんにしよか。」

母が言った。

「お。わかりやすいなぁ。そう呼んでな。」

「新聞??」

妹と私が声を揃えた。

「このおっちゃん、新聞配達しよんよ。」



そうなんかぁ。でも色々ってさっき言うたけど…



私は首を傾げた。
妹も、真似をしている。


母がすまして言った。

「二人とも、カッコイイ〜って思うかもよ。他にしよることは〜…」

妹はわくわくしている。足をバタバタ。

私もドキドキ。



「何かと言うと…警察犬の主人。」
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