ピエロ-私と中年男の記録-
悲劇
夏休み。

ラジオ体操の帰り、友達が聞いてきた。

「最近ピエロ行って、小指のおっちゃんと遊んでるん??」

「…小指のおっちゃんとは全然。」

「小指のおっちゃんとはって…。」

「他に、良いおっちゃんができた。」

「え〜そうなん。何かかっこいいなぁ。」


「その人、バイク乗ってるんよ。」

私は得意気だった。

バイクって言っても、今思えば原付なんだけど。当時の私にしたら、ひっくるめて、かっこいいバイク。

小指のおっちゃん??
あの人の話は止めて。


心の中ですましていた。




バイクの音がした。


振り向くと新聞のおっちゃんだった。


彼も気付き、お互い笑顔で手を振った。


友達は、なるほど〜という顔。


新聞のおっちゃんが近付いて来て、私の手を引いた。

きっとふざけたつもり。


何かが蒸発するような音がした。


「きゃああ〜!!」


友達が顔色を変えて叫んだ。


「足!! 」


…足??
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