ピエロ-私と中年男の記録-
約束どおり、八時に新聞のおっちゃんが来た。


母が挨拶をした。

父は出て来ない。


私と妹は車に乗った。



おっちゃんは、出会った頃よりよく話すようになっている。

妹は楽しそうに返す。

私は普通に返す。


何気無く、欲しい本があるけど、近所には売ってないので買えないと言った。


銭湯から出て、帰るのかと思ったら、車が違う方向へ走っていた。

「どこ行くん??」

びっくりして聞いた。

「ん〜…」

としか、おっちゃんは言わない。

着いた場所は遠くの本屋。

妹は寝ている。


おっちゃん、いつまでこんなんするん??

いつまで私んち来るん??

いつまで私を車に乗せて走るん??

いつまで無理して沢山話すん??




照らす月が、悲しかった。
< 32 / 38 >

この作品をシェア

pagetop