【短】恋の季節

春に

あの日も確か…

「へっくしゅん。」

くしゃみをしたんだ。そしたら…

「なまえはなあに?」


あなたが出てきた。


本当は、覗き込んできたあなたに
鼻のムズムズと格闘していたわたしが
気づかなかっただけなんだろうけど。

あまりにも良いタイミングだったから。

ちょっぴり古いんだけど、
"ハクション大魔王"かと思ってしまったんだ。



そのときの、
私の顔を覗き込んだあなたの瞳が
はっとするくらいキラキラしていて。


その輝きに惹かれたわたしは
『消えちゃったらどうしよう』って

もう一回出そうだったくしゃみを必死に我慢した。
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