はんぶんこ
何時間ぐらいたってからだろう、両親がドタドタと私の部屋に入ってきた、
「おかえり」
あえて冷静に挨拶を済ます、すると両親は笑顔でリビングでお茶でも飲もうかと私を誘った

静かなリビングに紅茶を注ぐ音だけが鳴り響いた、いつもの光景だけど今日は少しどころじゃなくてみんな緊張してたと思う、
紅茶をいれたカップを持ったお母さんがテーブルの前に来た、するとお父さんが言った
「昭の期待をぶち壊すようなことをしてしまって…本当にすまなかった!」
頭を下げるお父さん、こんな父親の姿を見ることになるなんて思ってもみなかった
「私に謝ってもなんにもならないよ?お父さん。これからも馬鹿なこと続けるの?」
それに返ってきたのは思ってもなかった答えだった
「実は今日な? スポンサー契約を全部破棄してきたんだ」
え?全部ってことは正式的なのも全部?
「私たちまた今度は腕だけで勝負するの、会場は今までみたいに大きくないし、音楽会の方々からの支持も減るだろうけど…お母さんもお父さんもあなたのおかげで自分が間違っていることに気付かされたの…」
そうだったんだ…私がしたことに意味は本当にあったんだ…
「それに、娘に初めて家出なんかされたら反省せざるを得ないよ。」
とお父さんが笑いながら言った
「ごめんなさい…」
「今回は僕たちは怒れる立場にないから…」

しばらく三人で紅茶を飲んでいた
「あ、そういえば何かヴァイオリンで弾いて欲しい曲ある?」
「そうねえ…」
「ああ、お母さん。あれがいいんじゃないか?」
「そうね!じゃあ、『G線上のアリア』お願いできるかしら?」
「喜んで!」
春仁が褒めてくれたヴァイオリン…今なら自信持って好きって言える。
私の演奏を聴いてお母さんとお父さんは泣いていた、私はそれが心から嬉しかった。
私の演奏で心を動かされた人がこんな身近にもいたのだから…
< 17 / 23 >

この作品をシェア

pagetop