一夜だけの禁忌
押さえきれない想いに苦しくなったあたしは年相応の彼氏と付き合う事で自分の欲求を他へ向けようとした。
彼氏の昌義くんはとても大切にしてくれたし、幹人くんの事はファンとし眺めていれば幸せに違いないと思った矢先のこの移動。
まだ、心の整理は出来ていなかった。
このまま別れたら、明後日に後悔で涙する自分の姿が浮かんだ。
だから、決心したのだ。気持ちを伝えようと。
課長の乾杯の声に皆がグラスを上げた。
子犬みたいだった幹人くんが、今では当たり前にビールを喉へと流し込む。
その姿を、ぼんやり見ていると
「今まで色々とありがとうございました」
幹人くんの方から声をかけられた。