一夜だけの禁忌
幸い今近くには誰もいない。本当に、最後のチャンス。
「そう、幹人くんの事好きだって気持ち、なんとかして」
まさかの言葉に一瞬言葉を失う幹人くん。
そりゃそうだ。
酔っ払って面倒なお局でしかない。
けれど……座敷のテーブルの下、幹人くんの膝があたしの膝にくっついた。
「いいんですか? 佐野さんから誘ってくれるなんて、今日は帰しませんよ?」
不敵に笑い、完全に男モードになった幹人くんに驚きながら、こくりと捕らわれる。
ピッと携帯の電源を切ると、2次会を丁重に断りまた駅で合流した。
そしてあたしと幹人くんは、まるでずっとそうだったみたいに、恋人繋ぎで街の一角に光る灯りの元へ。
最初で最後の思い出を作る為に……。
【END】
