虹の向こうへ~君と見た空をもう一度~


「さん付けじゃなくていいよ?」


「では、平助君、で」



さすがに、呼び捨てはまずいと思う。


わたしには、君付けが限界だ。



「そうしてくれると、嬉しい」



パアッと、明るくなった顔。


それを見て、わたしの顔にも笑みが浮かんだ。


明るく、和んだ部屋の中の雰囲気。



そんなことをしている間に、あの人が追い詰められていたなんて。


限界に達していたなんて・・・


わたしは気付いていなかった。


もう――――手遅れだった。
< 498 / 858 >

この作品をシェア

pagetop