あたしの甘ーい幼なじみ




「……ちょっと、抜ける」


「おーう」



部活を抜け出し、俺は保健室に向かった。

授業中に羽衣子ちゃんが倒れたらしい。

ちょっとでも様子を見れたらいいけど。



階段を登っていると、声が聞こえた。


見えたのは――栗色の髪


あ、


「羽衣……」


彼女の後ろから背の高い男の姿が現れ、俺は口を閉ざした。



「ほら、鞄かせ」


「えー?いいよー」


「病人は素直に従え」


「……ありがと」




俺に気づいた様子のない2人は、そのまま俺の前を通り過ぎていく。



――――――……


なんだ……?



その姿を見送りながら、少年は首を傾げた。




今までに味わったことのない、なんとも言えない気持ちが溢れるのを感じながら。



少年は、その場に立ち尽くしただけだった。


< 96 / 536 >

この作品をシェア

pagetop