逃げた花嫁 21世紀編

男って…【番外編】



「次はエニュエムビー48です。あっ!」
「大丈夫ですよ〜噛んでないですよ〜。皆さん笑わないで下さい〜」

白組司会の男性がフォローしている。

12月31日大晦日

おじいちゃんの家に家族が集まり皆で『紅白歌合戦』を観ている。

「あっまた噛んだ。」
「この子、練習不足ね!」
勝美お姉ちゃまが怒りながら画面を睨んでる。

仕事に厳しいお姉ちゃまには許せないらしい。

「姉貴、怒るなよ。しょうがないじゃないか初めてなんだから。ねぇ〜ベイビー」

国君が愛妻ちゃーちゃんの膨らんだお腹を愛しいそうに撫でながらく紅組司会者を庇う。

「「あぁぁ〜噛んだ」」女性陣の声が重なる。
「あーもう観てらんない!これが華だったら大説教ものよ‼︎」
勝美お姉ちゃまがいっきに飲みかけのビールを飲んだ。

絶対にあり得ないが私に司会のオファーが来たらと考えただけで背中に嫌な汗が流れた。

その時、私の腰に竹君さんの腕がまわった。少し驚き隣に座る竹君さんの顔を見上げた。

竹君さんは相変わらずの鉄仮面でじっとテレビを観ていた。

「竹君さん?」
竹君さんの顔がゆっくり私に振り向き目があった。

「大丈夫だ。華、無駄な心配はするな」
「えっ?あっ!そうですよね。あり得ない話なんだから…私ったら馬鹿みたいですね」
流石、竹君さん。
私の考える事はお見通しのようだ。
そんな竹君さんの言葉に嬉しくなり顔が緩んでいる私の耳元に竹君さんの顔が近づいた。
「大丈夫だ。華に司会のオファーが来たら俺が特訓してやるから心配するな」と
耳元で囁かれた。

「えっ?」
竹さんが右口角を少し上げて意地悪く笑っていた。
「……。」
最近の上様は私をからかう事がマイブームらしい。

「ふっ…これはちょっと」
「そうね…千恵美ちゃんもそう思う?」
『我が家のおおらかさん2トップ』
江代おばさんと千恵美お姉ちゃまが苦笑した。


「…ねぇ さっきから男性陣は静かじゃない?」
千恵美お姉ちゃまの長女、佳津江ちゃんが呟いた。

そういえば国君以外は誰も何も言っていなかった。

「国君の言うとおりだ。初めてなんだからしょうがない」
秀おじさんが微笑みを浮かべ見守るように女性司会者を観ていた。

秀おじさんが江代おばさん以外の女性にこんな表情を向けるのを初めて見た。

「一所懸命で『可愛い』じゃないか」
あからさまにおじいちゃんは『可愛い』から良いと言っている。

そして上様は
「心が狭いぞ」
この一言で全てを語った。

「「「そうだぞ!」」」
今度は男性陣の声がかさなった。



「「「「はぁぁーー男って……」」」」
年の瀬の大晦日の晩、北風と一緒に平松家の女性陣のため息が聞こえて来た。

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