お嬢様になりました。
「お祖父ちゃん、入学祝いありがとう。 嬉しかった、大切に使うね」

「喜んでもらえてなによりじゃ」



あんなに高価な物じゃなくてもよかったのにって言おうと思ってたけど、言えなかった。


プレゼントを貰った私以上に、お祖父ちゃんの方が喜んでる様に見えたから。


お祖父ちゃんなりに距離を縮めようとしてくれてる。


今までの一緒にいられなかった時間を埋めるように。


まだ他人行儀な所はいっぱいある。


でも、私もお祖父ちゃんに歩み寄る努力をしたい。



「葵」

「ん?」

「自分の思う様に生きなさい」



首を傾げる私に深く微笑むと、お祖父ちゃんはまた口を開いた。



「宝生院だとか、ワシの事だとか、一々考えんでもよい」

「でも……」

「葵は葵じゃろう? 無理に変わる必要などない。 お前さんが笑って過ごしてくれるなら、ワシも笑って過ごせるじゃろう」



ジーンっと胸が熱くなり、鼻の奥がツーンとした。


お婆ちゃんが死ぬまで思い続けた人。


こんなに素敵な人を好きになったんだね……お婆ちゃんの見る目は確かだよ。



「お祖父ちゃんにはずっと笑顔で居てもらいたいから、私も笑顔でいる。 その方が天国にいるお婆ちゃんたちも、安心してくれると思うからっ」



夕食迄の間、私とお祖父ちゃんは止む事なく話を続けた。


その時間は和やかで、心が癒されるようだった。





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