男ときどき女
日曜日。隣町のある喫茶店で待ち合わせをした。

もうひとりのサクラと。

俺はクリームソーダをストローで混ぜながら待っていた。

もちろん女装で。

友人の技術を見よう見まねで完成させたのだ。なかなかいいできだなぁと自画自賛した。


ふと窓の外をみると、怜という名の男が横を通り過ぎる。

俺は急いで店内に顔をそらした。

なんて勘のいいやつなんだ。

きっともう一度会えるという根拠のない自信に満ち溢れて来たんだろうな。


クリームソーダに集中していると、店内に客がきたことを知らせる音楽が流れ出す。


“いらっしゃいませー”という店員の声とともに、足音が迫り、俺の横で止まった。


ストローの間の液体がいって戻った。


おそるおそる横を見ると、笑顔で手を振るサクラがいた。


気が抜けた俺は軽く会釈して手を振り返した。


「どうぞ」

俺は自分の前の席に右腕を差し出した。


彼女は頷いて座った。




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表紙・目次

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