REALLY
「……しゃーないな。行ったるわ」

「クス……さすがは私の主人」

「るっさいわ。それより、その体やと楽になるんやなぁ。なんで最初からその姿にならへんかったんや?」

「うん?第一印象は肝心だと思ってね」

「………。そうかいな」



呆れた、とでも言いたげな鶴嫁怪にカルハは「でもね、」と言葉を続ける。



「この体だと何かと猫の特性が不便でね。例えば……、」



例えば?、鶴嫁怪が聞く前にカルハが鶴嫁怪のデコに触れた。

「ちゅ」猫に似つかわしいリップ音が響き、カルハは地表へと下りる。



「メス猫の発情期は好きかい?」



「にゃー」とわざとらしく笑うカルハに最初こそポカーンとする鶴嫁怪だったが、みるみる内に顔が赤くなる。



「~~っ、ンなっ…」口をパクパクする鶴嫁怪に「ウブいねぇ」茶化すカルハ。

その言動が火に油を注ぐ行為だと知ってのことだろう。

そのままカルハは逃げるように走り出した。



「ちょお待てやっ!ンな、な、何してくれはんのやっっ」

「デコチュー」

「ストレートに言わんでええわっ」



ギャーギャー(主に鶴嫁怪が)言い争う二人には、この時間こそ幸せなのだろう。

後に訪れる不幸がすぐそこまで来ていることを、今はまだ知る由もない。



まだ、知らなくともいいのだから…。

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