ビターチョコレートに口づけを

ぽんぽんっと大きな背中を叩いて、出来る限り、優しい声で語りかける。


「いっくん。
ほんとはまだ、雪のこと好きでしょう。」


こくり。
僅かに頭が動いたのがわかった。

代わりにずきりと私の胸が痛んだ気がするけれど、構わず続けた。


「そうだよねぇ。
まだ、別れたの最近だしね。
しょうがないよ。
大丈夫。前に進まなくてもいいよ。」


そう言ったら、より一層強く抱き締められた。


「大丈夫。
いっくんにはたくさんの人がいるよ。
たくさんの人が支えてくれてる。
だから、心配しなくても、また進めるよ。
雪を、思い出にできる日が絶対に来るよ。」

「………ありがとう。」


嗚咽混じりにそう言ったいっくんは、やっぱり優しくて、でも弱々しくて、子供のようだった。

それがどうしようもなく愛しいなんて、本人に言える筈もないけれど。


泣いて。泣いて泣いて。
思う存分泣いて。
顔をあげた君が前を向いて笑ってくれたら。
傷付いてまで取ったこのブーケに、私の中でそれ以上の価値が生まれると思うのです。



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