ビターチョコレートに口づけを

「あ、そうだ。
帰りは校門の前でいい?」


当然のように聞いてきたいっくんに慌てて首をふる。


「いーよ!!!!
帰りは自分で帰るから!!!
いっくんお仕事なんでしょ?」


「はは、いーよいーよ。
ちょっと遅くなっちゃうかも知れないけど。
どうせ帰り道だし。」


ね?と笑ったいっくんの顔は、やっぱりきらきらと輝いていて、とても眩しい。

ごくり、と意味もなく唾を飲んで、こくん、とうなずいた。


「じゃあ、放課後、校門前で。
着いたらメールする。」


いっくんがそう言った瞬間、キキッと車が止まる。
下げていた頭をあげると、もう、校門前だった。


「一人で行ける?」


ここに来てまで過保護を続けるいっくんに、


「当然です!」


と、少しだけ強い口調を返した。
なんだこれ。
子供扱いが異常すぎる。


「ん、じゃあ気を付けて。
いってらっしゃい。」


私のそんな態度を気にも止めず、最上級の笑みで笑ったいっくんに、私が苦言を漏らすことなんて当然出来なかった。


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