あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
車が江梨の町に着いた時には、もう町は暗かった。

ヒロの町では夕方だったのに。

二人は駅前の大きなカラオケボックスに入った。

初めはヒロが二人が好きだったサザンの【逢いたくなった時に君はここにいない】を歌い、次に江梨の為にサザンの【あなただけを】を歌ってくれた。

やがて江梨が祝杯をあげましょうと水割りを注文し、チャゲ&飛鳥の【男と女】【ひとり咲き】【ムーンライトセレナーデ】を歌った。

『変?私なのにこんな歌を歌ったら』

「たまにはいいんじゃない?」

歌にこめた江梨の気持ちに、一つも気づかずにヒロが返事をした。

数時間でも構わない。

ヒロちゃんの奥さんでいる幸せを噛みしめよう。

一生消えないように。

思い出だけで生きていけるように。



その夜二人は抱き合って深く眠った。
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