あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
二人の事

隙間

江梨の前でヒロは優しかった。

いつもいつも微笑んで抱きしめてくれた。

愛してると言っては、人目もはばからずキスをしてくれた。

それはすれ違う度と言ってもいい程だった。

交番の前だったり、朝の別れのホームだったりした。

いつもヒロの誕生日は手作りのケーキ屋顔負けのケーキを焼き、6時間もキッチンに立ち料理を作った。

不安な中にも、お金では買えない大きな幸せがあった。




大地震の朝も二人は一緒で、抱きあって眠っていた。

地下鉄サリンの事件のあった日も、二人は一緒にいた。

ユウが孤独や淋しさに泣いていても、私はヒロがいない毎日が考えられなかった。

二人はお互いが好きで好きでたまらなかった。

ただ好きだった頃と違い、妊娠して出産となる事なんて思いもせずに、二人はただ一緒にいたかった。

< 58 / 224 >

この作品をシェア

pagetop