≫ロックフェス
自分のキモチ
最近、学園生活が楽しくなってきた気がする。
苦手だった教室では、頻繁に優魔が話しかけてくれるようになり、それをきっかけに他の生徒も話しかけてくれる。
部活生活はもっと楽しかった。自分のことを思ってくれる仲間がいる、それだけで莉夢は最高の気分になれた。
歌の練習にも励み、メンバーとカラオケに行くことも少なくなかった。
ある日、部室で優魔が
「今日、カラオケ行こうぜ。」
と言った。
だが、莉夢以外は予定があったため、何故か2人で行くという話になった。
莉夢はかたくなに断ったが、今日、暇だなと呟いたのを聞かれてしまっていたため、2人でカラオケに行くことにした。
カラオケでは、2人で楽しく歌い続けた。
優魔は、夜遅くなってしまったからといって、莉夢の家まで送ってくれた。
その日の夜は興奮してあまり眠れなかった。

最近、軽音部の女子の間で恋バナが流行っている。軽音部の女子といっても、4チームに分かれているため、12人ほどいる。
妖万斎の間でも、恋の話は止まることがない。
ある日、来夢と綾に
「ねえ、莉夢って好きな人いるの?」
と聞かれた。恋など莉夢はしたことがない。返事に困っていると
「あら、いないのね。好きな人ができたら、すぐに私達に教えるのよ。」
と言って、2人は去って行った。
家に帰っても、その言葉は莉夢の頭の中をぐるぐるとまわっている。
好きなひと…か。そんなの、分からないよ。

ある日、優魔に週末に映画を見に行かないかと誘われた。
恥ずかしいため断ろうと思ったが、チケットが余ったんだといわれた。
しかもその映画は莉夢が前々から見たいと思っていた映画だったため、見に行くことにした。
日曜日、莉夢は少しオシャレをして、待ち合わせ場所の駅に向かった。
早く行ったつもりだったが、もう優魔は待っている。
「ゴメン、優魔くん。待たせちゃったかな。」
謝ると、優魔は
「いや、今来たとこだよ。それじゃあ、行こうか。」
「はい。」
同学年だが、やはり敬語を使ってしまう。そんな莉夢を、優魔はいつも、優しく包み込んでくれる。
映画館はなかなか混んでいた。しかもほとんどがカップルだ。
(私も彼氏ができたら、こういうところに来てみたいな)
そう思うと、ふと、優魔の顔を見上げてしまった。
な、何言ってるんだ!優魔君が彼氏になる訳ないじゃない!と1人で被りを振っていた。。
映画はなかなかおもしろかった。見終わった後も、優魔は莉夢をお茶に誘ってくれた。
カフェで少し話した後、優魔は
「今日は楽しかったな。また来ようぜ。」
と言ってくれた。莉夢の心は、その言葉で弾んだ。
莉夢の、優魔に対する印象は、憧れから、優しさに変わった。
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