恋
冷たい壁の感覚、私に触れる彼の体温の温かさ。そして、……重ねられる唇。
「……っ、ふっ」
それはいつもの優しいキスではなく、深くて私を食べつくそうとするように激しい。
膝から力が抜けて、崩れそうになった私を支えるように、彼は抱きしめる腕の力を強くした。
やがてゆっくりと唇が離れる。
私は泣いていたらしい。
彼の指が目じりをそっと拭ってくれた。
「ごめん、びっくりした?」
「……はぁ、だって」
息も出来ないほどのキスなんて、初めてだった。
「あんまり可愛いから」
照れた顔でそういう浩介くんも、いつもよりなんだか色っぽい。
だけど何でこんなときにまで、私の頭には夏木くんがちらつくんだろう。