「夏木くん」

「よう」

「なんでマラソンなんかに出るの?」


私は思わず彼に掴みかかっていた。


「高校の時怪我したって浩介くんに聞いた。どうして? 走れるの?」


私の剣幕に彼は一瞬たじろいだようだったが、振り上げた私の拳を受け止めるように手のひらを私に向けて差し出した。


「……俺、浩介が大事なんだよ。俺が一番辛かった時、励ましてくれたのが浩介だ」


ぽつりと、力ない声で語り始める夏木くんはまるで泣いているようだ。


「その浩介が、好きな子が出来たと言った。入学してすぐだ。アンタを講堂で見かけるたびに可愛いな、彼氏いるのかなってうるさいくらいで。俺はあいつを応援してやりたくて、アンタを探すようになった。浩介に、アンタの居場所を教えてやるためにだ」


じっと見つめる私に、夏木くんは目を合わせない。

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