「芽衣子!」

「ど、どうしたの。浩介くん」


彼の様子がおかしい。酷く苛立っているようだ。


「どういうことなんだ。知ってるのか?」

「知ってるって何を?」

「夏木のことだよ!」


手首をつかまれ引っ張られる。

浩介くんは歩みを緩めることなく、私を先へ先へと引っ張った。


「ちょっと、芽衣子をどこに連れて行くのよー!」


背中に聞こえる寧々の声もあっという間に小さくなった。


「痛いってば、浩介くん」

「芽衣子と夏木、付き合ってたんじゃなかったのかよ」

「え?」


ようやく浩介くんが立ち止まり、遠くの茂みを指差す。

そこには二人の男女が仲よく肩を並べて歩いている。
一人は夏木くん、もう一人は……。


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