「……芽衣子」

「そんなふうに呼ばないで」


名前を呼ばれるだけで、熱が上昇していく。
私だけ、いつまでもドキドキして苦しくて。
この恋を捨てられれば楽になれるのに、やり方も分からない。


「ごめん」

「だからっ」


苦しい。
あなたの視線、体温、言葉。
ほしいものすべてが目の前にあるのに、全部私のものじゃない。


「謝るくらいなら、追ってなんて来ないで。夏木くんは匡深さんのことが好きなんでしょ」

「違う」

「違くない。私への気持ちなんて、正義感で殺せる位のものだったくせに」

「……違うっ」


汗の匂いのする体に、包まれた。
硬い彼の体は、予想以上に熱を持っていた。
私の体温の方がよっぽど低い。


「その程度なんかじゃない」

「ちが……」

「俺が皆悪かった。三ヶ月もすればお互いに熱が覚めるのかもしれないって思ったんだ。……でも」


言葉が途切れるたびに、腕の力は強くなる。


「腹の中で、くすぶり続けて消えてくれない」


私と一緒。
そう思ったら、体から力が抜けてくる。


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