同情の後始末

 地面にリズミカルに響く足音が急に立ち止まる。
ゆっくり目を開けると、私達から数メートル離れた先に泣きそうな彼女と浩介くんが見えた。


「匡深さん」


私がぽつりというと、夏木くんが身を固くする。
そして抱きしめていた腕を解いた。

「匡深」

「夏木、……ヒドイよ」


匡深さんも、後ろに立っている浩介くんもとても傷ついたような顔をしている。

そうね。私が傷つけたんだもの。
だけど。


「私、夏木くんが好きなの」


謝ったりしない。この気持ちが悪いものだなんて思いたくない。
誰かを傷つけたかも知れない。それでも、私には必要な感情だ。


「今はあたしの彼氏よ」

「うん。……そうだね」


夏木くんの腕を軽く押す。
その関係は二人だけのものだ。ケリをつけるにしろ続けるにしろ、私がどうこうできる問題じゃない。


「匡深、俺……」

「あたし、別れないから」


夏木くんの言葉を遮るように、匡深さんが悲鳴に似た声を出す。


「夏木言ったじゃん。彼女のことは諦めるって。次の恋で癒やしなよって言った時、そうだなって言ったじゃん」

「匡深」

「なんで? 何で今更?」


彼女が取り乱せば取り乱すほど、私は何故か冷静になっていく。
夏木くんが彼女に告げたであろう言葉も、私には苦しい言葉だけど受け止められた。
まるで私の分まで、彼女が興奮してくれているようだ。
< 68 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop