ドメスティック・エマージェンシー
彼はやはり私を信じていない。

途端に心細くなった。
私は一人なのだ。
横に、私と似た心境の人がいても……私たちは違う人間なのだ。

私は一人。
私とゼロは同一人物じゃない。
当たり前のことだが、やけに絶望感が目の前を黒くさせる。

唯一話してくれた過去。
最小限知っておかなければならない、殺人に至った過去。

それが、家族に捨てられたこと。
そして施設で育てられたこと。

……まさか。
彼は、施設に行こうと思っているのじゃないだろうか。

ありえない話ではない。

――私たちは違う人間、だからこそ……知らなければならない。

着いていこう、明日。
こっそりと気付かれないように。

静かに決意を固め、午前二時を待った。







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