ドメスティック・エマージェンシー

「感情は、自分だけの無限の宇宙なんだよ」

「ウチュウ……」

初めて言葉を教えられたロボットのように反芻した。
葵の言葉は何か力が宿っているのに、私の言葉は酷く脆くシャボン玉のように割れて消えてしまった。

意味を理解出来るか出来ないかの違いに、焦燥感が迫ってくる。

「ねえ、どういうこと？」

なのに葵はいたずらっ子のように笑み布団の中に潜ってしまった。
お預けを食らった気分で、やるせない。

「……バカ」

仕返しのごとく言葉を吐くと、葵の笑い声がころころと転がってくる。

決めた、しばらく無視しよう。

決心を固め、目を瞑る。
意識が途切れるその寸前まで、テレビや写真でしか見たことのない壮大な宇宙を想像していた。