フシダラナヒト【TABOO】
気付けば右手を握られていた。壁と椅子の間で誰にも見えない。


予想していなかった行動に身体が動かない。でもこの押しの強さに気持ちが高ぶるのも事実。


この人もきっと草食系なんかじゃない。もっと危険な肉食獣。


頭で鳴り響くサイレンに負けないくらい心臓もうるさい。



彼氏がいるから。

本当はただ嫉妬させるだけのつもりだった。


ダメだダメだとサイレンが鳴る。この人は危ない、まだ引き返せると鳴り響いている。


彼氏がいるのに。

この手を拒めない。もうカウンターを見ることはできない。



ぬるま湯がグツグツと音を立てて煮立っていく。そんな気がした。

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