黄金時間が過ぎるまで
「あれ、今帰り?」

「わっ」

いきなり後ろから声がかけられ、千歳は飛び上がった。

いつの間にか、鳴海が千歳の背後に立っていた…

「び・びびびっくりした〜急に声をかけないで…」

胸に手を当てて、ゆっくりふり返ると鳴海の顔を見た。

一方鳴海は、その様子をうっすらと、笑みを浮かべて見ている…

「こんな所に、こんな時間まで、何してるんですか?」

ごく淡々と鳴海は聞いた。

「私は図書室からの帰りで…それより、そっちこそ一人で何してるの?」

鳴海は、うーんと言って口元に手をやると答えた。

「ちょっとね、考え事をしてて…あ、知ってます?屋上、立入禁止になった理由」

「え…知らない」

「何でも何年か前に、自殺者が出たんだそうですよ…」

「え」

「未遂で終わったらしいけど」

「へーそうなんだ…迷惑なヤツだな、そいつ」

「でしょ?」

「屋上からの眺めが、一番いいはずなのに…」

「あ、そう思うでしょう?実は、屋上に出れる方法は、ないかなーって考えていたんですよ」
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