黄金時間が過ぎるまで
″ガチャ″と音を立てて鍵が開いた…

重い扉がゆっくり開かれると、初夏の緑が飛び込んできた。

さわやかな風に包まれて、二人は屋上へと出る…

「わーーー」

千歳は感無量といった風に、両手を広げると屋上を歩き出した。

そこからは、学校の周囲に広がる一面の田んぼを見渡す事が出来た。

稲の緑が揺れている…

さわさわと、音が聞こえてきそうだ…

鳴海は何も言わず目を細めると、その風景に見入っていた。

はたからは分かりづらいが、静かに感動しているらしい…

千歳は鳴海の横に来ると、話しかけた。

「すごいね、本当に出れるなんて…鳴海君が誘ってくれなきゃ、考えるだけで終わってたよ」

「うん…たぶん自分も一人だったら、屋上に出れなかったと思うよ」

そう言うと鳴海は、ポケットから真新しい鍵を二本取り出した。

「はい、これは共犯者たる千歳さんの鍵ね」

ニッコリと笑って、千歳に手渡した。

「やっぱりね、合い鍵作りに行ってたんだー」

「こーゆー事は、思い立ったが吉日ってゆーでしょ?」

「ははは…なるほどね」

千歳は鍵を受け取ると、握りしめてみた…
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