黄金時間が過ぎるまで

第七話 〜鳴海が二人〜

西日が差し込む放課後の教室で鳴海は一人、ボンヤリとしていた。

自分の席から、校庭で部活をしている生徒の姿が一望出来るせいか、外を見て過ごす事が増えた気がする…

そんな事を思っていると突然、ガラッと音を立てて戸が開き、誰かが入って来た。

そちらをふり向かず鳴海は、その主に話しかけた。

「あった?」

「あった、あった」

そう言いながら、鳴海の前の席に着いた。手には図書室から借りて来た小説が握られている。

「これ、面白しろいよ」

千歳は今回はまったとみえる小説を、ペラペラとめくって見せた。

「そう?」

「うん、鳴海は何か読まないの?本とか…好きじゃないの?」

「そうゆー訳じゃないけど…ほら、本とか読んじゃうと、時間てあっとゆー間に経つじゃない?」

頬杖をついたまま、鳴海は微妙に笑った…

口元を手で隠しているから、本当に笑っているのか良く分からない表情だ。
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