フェイク
「……理緒さん」


翼さんが、妙に改まった口調で私の名前を呼んだ。


「はい」


「ちょっと失礼します」


返事をする間も無く、翼さんは私の顔に両手を伸ばし

するりと、一瞬でサングラスを外してしまった。



「あ……」


「後で必ず返します。

すみません、俺はこの方が好きなんで」



すみませんと言う割には確信に満ちた表情だった。



それから翼さんは、私の顔を見て満足げにうなずき

「じゃ、行きますか」

と言って、何事も無かったように歩き出した。


私も慌てて後を追う。
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