まほろば【現代編】
ホムラは私の心にシンクロしたのか、その紅色の瞳を悲しげに細めていた。

ホムラが目を細めるのは、感情の変化があったとき。

すべての感情のときに目を細めるけど、最近になってちょっとずつその違いがわかるようになってきた。

それになによりも一番大きな変化は、ホムラがしゃべるようになったことだった。

それまでも、啼くことはあったけどしゃべることはなかった。

というか、しゃべれることがわかったときには思わず腰を抜かすほど驚いたんだけど。

悲しそうな顔をするホムラの顎を優しく撫でてあげながら、飛龍君に視線を戻す。

「で、あったのか?」

私の長い沈黙に業を煮やしたかのようにイライラした少し詰問口調。

「えっと、その。あったといえばあった……のかな?」

「どんなことだ?」

どんなことって言われてもね……。

ホムラがしゃべれるようになったとか? 

いやたぶん、飛龍君が求める答えはもっと違うことのような気がする。

「あぁ、そういえば……」

答えようとしたところで、思わぬ方向からのかわいらしく重なる声。
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