まほろば【現代編】
人がいたらここがどこだか聞いて……。

って、聞いても意味ないのか。だいたい前に行った場所がどこだかもわからないんだから。

でも、とにかく今の状況を打破するにはやっぱり誰かの意見を聞くしかない。自分自身に言い聞かせつつ、ゆっくりと歩を進める。

その小屋は簡易的に作ったというのが容易に想像がつくくらい、ざっくりとした造りになっていた。

申し訳程度に入り口部分と思われる場所についているすだれのようなものの前に立って声を掛けてみる。

「すみませーん。誰かいませんかー」

返事が返ってこない。中で何かが動く気配すらない。

どうやら、誰もいないみたいだったけど、だからってどこかに行くあてもない。

さて、どうしたものか。

不法侵入かなと思いつつ、そのすだれを押し上げて中を覗いてみた。
< 263 / 702 >

この作品をシェア

pagetop