まほろば【現代編】
疑問に思いつつ振りかえれば、ちょうどリュウが部屋を出て行くところだった。

今は、この部屋の中には私とシロだけ。

シロは、落ち着くのか部屋の真ん中に陣取り大きく伸びをしてから丸まって寝る格好に入ってしまった。

シロのそばに行き私も腰かけて、シロの滑らかな身体を撫でると、どこかしら気持ち良さそうな表情を示した。

それまで、悲しげな瞳しか見ていなかったので少し驚いたけど、それ以上に嬉しい気持ちが湧いた。

しばらくすると、リュウが例の銅のお皿に水を張って持って入ってきた。

「ハルカ、また頼む」

それを私の前に静かに置くと、リュウが真っ直ぐ私の目を見つめながらそう言った。

思いのほか近い距離に私の心臓はドクンと跳ね上がる。

「わ、わかった」

顔が赤らんでいるのを意識しつつ、視線をシロに向け精神の集中を試みた。

リュウがすぐそばにいると意識してしまい、どうしても集中ができない。
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