まほろば【現代編】
でも、思わずその前で立ち止まってしまった。

コレはいったいなんだろう? 神社全体を包むように真っ黒い靄が巡っている。

どうやら、かろうじて鳥居の外に出てくることは阻まれているみたいだが、それも時間の問題に思えてくる。

もしかして、この中にリュウがいるのだろうか? 

あまり考えたくないことだった。こんな、悪意の塊みたいな中にリュウがいるのなら、無事で済んでいるはずがないからだ。

震えて動かなくなりそうな足を無理やり地面から引き剥がして、どうにか一歩進めた。

その一歩が大きかったのか、後はもう後先考えず鳥居の中へと駆け込んだ。

鳥居の中に入った瞬間、私の胸元の勾玉が光だしそこから派生した柔らかい光に身体全体が包まれる。

そのお陰か、不思議と何の苦痛も感じることなく黒靄の中を歩くことが出来た。

とにかく、今はリュウの姿を探すことが先決だ。
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