まほろば【現代編】
【ハルカサイドⅧ】

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昨日、いきなり家を飛び出したから戻ったときにはお母さんに散々怒られたけど、そんなことは全く気にならなかった。

それよりも、結界の張りなおしが失敗してしまったこと、真人君と会ってから起こった出来事などが気になって、ほとんど眠ることが出来なかった。

だから、外がうっすらと明るくなり始めた早朝に、気分転換のつもりで家を出た。

「うーん、やっぱり朝の空気って気持ちいいな」

夏休みも終わりに近づいてきているこの時期だけど、昼間はまだまだうだるような暑さが続いている。

それでもやっぱり、朝方はいくぶん過ごしやすくなってきている気がする。

家の近所をゆっくりと散歩して戻ってくると、ポストに新聞が無造作に詰め込まれているのが見えた。

別に新聞を取ってきたからって昨日のことを許してもらえるとは思えなかったけど、少しでも気持ちを軽くするためにポストを開いた。

大量のチラシが挟み込まれた分厚い新聞紙を取り上げると、どうやらその下に押し込まれていたらしい小さな封筒がポトリと下に落ちた。
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