まほろば【現代編】
それに、紗綾さんとは一度ゆっくりと話したいと思っていたから丁度いいかもしれない。

リュウからは、後のことは俺に任せろと言われているけど紗綾さんに会うだけだから約束破ったことにはならないよね? 

それは、自分が動くことに対する単なる言い訳だというのはわかっていたけど、どうしてもじっとしているなんてことができない。

大丈夫。紗綾さんと会って、真人君のことを聞くだけ。それだけだから。

自分にそう言い聞かせつつ、それでもちょっと後ろめたいからリュウ宛に手紙を書くことにした。

本当は、携帯でメールを打てば早い話な訳だけど、そうするとリュウに反対されそうな気がする。

手紙なんてしばらく書いたことないし、字にもあまり自信はないんだけど、他に手立てが思いから仕方がない。

一度、新聞をリビングに置いてから自分の部屋に向かい机の前に座る。

「さてと、どうやって書こうかな?」

いざ手紙を書いてみようと思うと、なかなかその作業ははかどらなかった。

だいたい、男の子に手紙を書くなんて初めてのことだし、しかもその男の子が好きな人だと思うと余計に意識してしまって書いては捨て書いては捨てを何度も繰り返してしまった。
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